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HATARAKI
仕事は、こなした瞬間につまらなくなる。
こんにちは、株式会社Galaxiaの上杉です。
仕事が面白いかどうかは、何で決まるんだろう。
好きな仕事だから面白い。
自分に向いているから面白い。
新しいことができるから面白い。
もちろん、そういうこともあると思う。
でも最近、僕はもう少し違うところに仕事の面白さがある気がしている。
自分で「どうすれば?」と考えている仕事は面白い。
逆に、どれだけ好きだった仕事でも、何も考えずにこなすようになった瞬間、少しずつつまらなくなる。
そんなことを考えたきっかけが、Vamosに掲載されていた、シャボン玉石けんの営業についての記事だった。
営業における声のトーンや相手との距離感、傾聴、観察。そして、経験を重ねながら自分なりの営業スタイルをつくっていくことが書かれていた。
営業経験がある僕としては、かなり分かる話が多かった。
その中でも読みながら考えていたのが、
営業は、話すより相手を見る仕事なのかもしれない。
ということだった。
そこから昔の営業時代を思い出していたら、いつの間にか営業だけではなく、「仕事を楽しむ」ということについて考えていた。
「何を話すか」より、「どうすれば聞いてもらえるか」
若い頃の僕は、かなり勘違いしていた。
相手さえ話を聞く姿勢になれば、俺は何でも売れる。
本気でそう思っていた。
今考えれば、だいぶ恥ずかしい。
そもそも、こちらの話をちゃんと聞く姿勢になっていて、商品にもある程度興味を持ってくれているなら、誰だってそれなりには売りやすい。
でも当時の僕は、
「話を聞いてくれる人には絶対の自信がある」
と思っていた。
ただ、この勘違いは悪いことばかりではなかった。
僕の頭が、
「何を話せば売れるか」
ではなく、
「どうすれば、まず話を聞いてもらえるか」
に向いたからだ。
法人営業2年目の頃、僕の担当地区は歌舞伎町だった。
最初に聞いたときは、正直「終わった」と思った。
会社より飲み屋の方が多い。
法人営業でどうするんだ、と。
そんな中で目についたのが、花屋さんだった。
昼くらいから店が開き、夕方になると歌舞伎町のお店へ大量の花を配達している。胡蝶蘭のような高い花もよく動いている。
忙しそうだし、単純に、
「この会社、保険売れそうだな」
と思った。
訪問してみると、当然こう言われた。
「忙しいから話を聞く時間なんてない」
普通なら、ここで終わる。
でも僕は、
「忙しいんだったら、手伝えばいいんじゃない?」
と思った。
それから、配達をよく手伝った。
花を運びながら話をする。
仕事のことも少しずつ分かってくる。
向こうも僕のことを知ってくれる。
そうしているうちに、
「明後日の昼過ぎに来い。話聞いてやる」
と言ってもらえるようになった。
最終的には、大きな契約をいただいた。
別に、格好いい営業戦略があったわけではない。
忙しい人に「僕の話を聞いてください」とお願いしているんだから、その人が僕のために時間を取れるように、僕も何か工夫しないとダメだろう。
それだけだった。
でも振り返ると、この頃の僕はずっと「どうすれば?」を考えていたんだと思う。
相手が答えを持っているとは限らない
今、企業のWebや採用、マーケティングの仕事をしていても、似たことを感じる。
多くの会社は、何かには困っている。
でも、
「御社の課題は何ですか?」
と聞いて、きれいな答えが返ってくることは、そんなに多くない。
むしろ本当に困っているときほど、
何をしたらいいのか分からない状態
なんじゃないかと思う。
考え方に問題があるのか。
人手が足りないのか。
現場のスキルに差があるのか。
教育なのか。
仕組みなのか。
本人たちにも、まだ分からない。
だから、一度の商談ですべてを聞き出そうとしても限界がある。
僕は、一つずつ話をぶつけることが多い。
「最近、こういう会社が多いですよ」
「この辺はどうですか?」
「他社ではこんなことが起きています」
話を置いて、反応を見る。
違えば、また変える。
だから何度も会う必要がある。
そして何度も会うためには、「また話す意味がある人」にならなければいけない。
役に立ちそうな情報を持っていく。
宿題をもらう。
困っていることで、自分に手伝えることがあれば手伝う。
考えてみれば、歌舞伎町で花を運んでいた頃と大して変わらない。
頼まれたものに、ひと手間だけ加える
ただ、相手のことが分かってくると、別の難しさも出てくる。
こちらの方が詳しいから、
「それは違います。こうした方がいいですよ」
と言いたくなる。
でも僕は、自分の正義を振りかざすことは、ときに暴力にも見えると思っている。
相手には、相手の考えがある。
だから、まず尊重する。
保険営業をしていた頃もそうだった。
お客様から、
「このくらいの保険料で、こういう保障が欲しい」
と言われたら、まずその要望を受け止める。
そのうえで、その人の家族構成や仕事、会社の制度、貯蓄などを考える。
本当にその人の生活が困るのは、どんなときなのか。
お客様自身が考え切れていないところまで情報を集めて、代わりに考える。
そして最後に、
「僕はあなたのことをこう考えたから、この内容にしました」
と伝える。
最終的に決めるのは、お客様だ。
以前、Vamosで極東ファディさんの記事を読んだとき、商品にあえて家庭で手を加える余地を残すという話があった。
例えば、具材の入っていないレトルトカレーに、家で肉やタマネギを加える。
その「ひと手間」に、料理をする人の気持ちが入る。
僕は、仕事も少し似ていると思う。
頼まれたものを、そのまま返すだけではない。
かといって、自分の考えで全部作り替えるわけでもない。
相手への尊重がベースにあって、自分の考えは隠し味くらいでいい。
「こうしてほしい」をまず受け止める。
そのうえで、
「この人の場合は、こうした方が少し良くなるんじゃないか」
と考えて、ひと手間だけ加える。
僕は、そういうところに仕事をする人の価値が出ると思っている。
ひと手間は、「何のためか」がなければ余計なお世話になる
もちろん、何でも思いつきで加えればいいわけではない。
自分がその商品や仕事について、
「これは何のためにあるのか」
という軸を持っていなければ、ひと手間はただの余計なお世話になる。
僕は保険について、
役に立ってはいけないけれど、役に立つときには「入っていて良かった」と思えるものでなければいけない。
そう考えていた。
事故にも遭わない方がいい。
がんにもならない方がいい。
保険を一度も使わずに人生を終えられるなら、その方がいい。
でも本当に困ったときには、
「あのとき入っていて良かった」
と思えるものでなければ意味がない。
しかも、その「良かった」は一人ひとり違う。
だから商品を知るだけでは足りない。
人を知る必要がある。
自分なりの軸を持つ。
相手を知る。
その二つを掛け合わせて、ひと手間を入れる。
僕は、それを繰り返していたんだと思う。
仕事は「どうすれば?」を考えている間は、まだ面白い
営業というと、話がうまい人や、人付き合いが得意な人の仕事だと思われることがある。
でも僕は、営業は才能だけで決まる仕事ではないと思っている。
必要なのは、素直さ、度胸、愚直さ、反復練習、学習能力、そして危機管理。
僕が言う度胸は、ビビらないことではない。
スベっても平気なこと。
仮説をぶつけて外す。
ちょっと変な空気になる。
それでも「違ったな」と思って、次を試す。
その繰り返しだ。
そう考えると、営業はかなり地味な仕事だと思う。
学んで、試して、失敗して、変える。
でも僕は、その地味さが面白かったのかもしれない。
そしてこれは、営業に限った話ではない。
僕が仕事を楽しいと感じているのは、
自分で考えて、試行錯誤しているときだ。
逆に仕事がつまらなくなるのは、考えずに、ただこなしているとき。
もちろん、仕事には単純作業もある。
資料を準備する。
数字を集める。
情報を調べる。
片付ける。
すべてをクリエイティブな仕事にする必要はない。
大事なのは、その作業が何につながっているか分かっていることだと思う。
歌舞伎町で花を運ぶこと自体は、単純作業だった。
でも僕にとっては、
「どうすれば、この人に話を聞いてもらえるか」
という問いにつながっていた。
だから意味があった。
そして、面白かった。
変えるのは、自分ではなく選択肢でいい
仕事がうまくいかないと、
「自分を変えなきゃ」
と言うことがある。
でも僕は、自分の性格まで変えて仕事をする必要はないと思っている。
変えるのは、自分ではなく選択肢でいい。
話し方を変える。
会う回数を変える。
準備を変える。
持っていく情報を変える。
提案を変える。
それでも嫌なら、やらないという選択肢だってある。
極論すれば、最初は二択でいい。
やるのか。やらないのか。
やらないなら、それでいい。
でも、やると決めたなら、
「じゃあ、どうやったら思い通りになる?」
を真面目に考えてみる。
うまくいかなくても、
「なんでだろう?」
と思えたら、もう一回試してみる。
僕にとって仕事の面白さは、案外その繰り返しの中にある。
面白い仕事を探すことも、自分に合う仕事を見つけることも大切だと思う。
でも、その前にできることもある。
相手が話を聞いてくれない。
じゃあ、どうする?
予定通り進まない。
じゃあ、どうする?
頼まれた通りにつくったけれど、もう少し良くできそうだ。
じゃあ、何をひと手間加える?
考える。
試す。
スベる。
また考える。
たまに、思い通りになる。
そして思い通りになったら、また次の「どうすれば?」が出てくる。
たぶん僕は、それをずっとやってきただけなんだと思う。
仕事が面白いかどうかは、仕事内容だけでは決まらない。
今日の仕事を、ただ終わらせるのか。
それとも、
「どうすれば、もう少し思い通りになる?」
と一度だけ考えてみるのか。
仕事は、こなした瞬間につまらなくなる。
でも「どうすれば?」という問いが残っているうちは、まだその仕事には、自分で考える余地が残っている。





